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左心房

好きなものを好きなように好きなだけ。

【映画】紅の豚:恋する男はかわいらしい【感想】

どうもこんばんは。

ただいま金曜ロードSHOWで秋のジブリスペシャルとして放送された『紅の豚』2周目に突入しました私です。

 

昔、我が家には幼少の頃の私と姉弟がひとりあそびするために何本もビデオが置いてありました。

ディズニー作品を数本、ジブリ作品を数本、『アルプスの少女ハイジ』全篇(たった4本のVHSにぎゅうぎゅう詰めで録画した結果、映像も音声もバジャバジャでしたが笑)、あとは教育系のビデオが何本か。

その中に『紅の豚』もありましたが、やはり物心つく前に見るのと今見るのでは違いますね。

当時、冒頭のワードをガシャガシャやってるシーンはじめおしゃれな雰囲気はびしばし感じていたものの、キャラクターの心情を言動から読み取ることも出来なければ作品中の世界観も理解出来ず、話の筋すらまともに追えていませんでした。

それが今では人並みには(おそらく)楽しめているので、多少は私も成長できたということでしょうか。

 

 ところで『紅の豚』というタイトルですが、聞いて最初に思い浮かべるのはやはり真っ赤な飛空挺ですよね。そりゃそうなんですが、この映画を観てみるとちょっとだけ印象が、というか、もう一つ紅色のものが見えてきます。

豚です。ポルコ・ロッソと呼ばれる豚さんです。あるいはマルコ・パゴットという男性です。

 

この作品ではポルコとジーナ、ポルコとフィオ、ジーナはイタリア飛空挺乗りのマドンナですし、カーチスからジーナへ、カーチスからフィオへと様々な恋が描かれます。

その中でポルコは何度か赤面します。

根城である孤島の夜フィオにキスをされた時や、若い頃ジーナを乗せて飛んだ際、ジーナのスカートが大きく翻るのを目の前にしたとき。カーチス越しにジーナの思いを知ったとき。

ちょっと今まさに作品を見直しながらこれを書いているのでそちらに引っ張られて他のシーンはすぐには出てこないのですが、他にもあったかもしれません。

とにかくポルコは赤面します。特に、直球で”女”をぶつけられたとき。

 

ポルコはアドリア海一のパイロットであり、WW1を生き抜いた退役軍人であり、女性に愛されるイイオトコです。ハードボイルドというのは彼のためにある言葉なのでしょう。

そんな彼が女性にド直球で好意を向けられては赤面するなんて、かわいらしいではありませんか。

 

戦争を経て人間社会に嫌気が差したマルコは魔法で豚となります。

誰によって、どうやってその魔法がかけられたのかは定かではありません。しかしポルコ本人は豚としての生活がまんざらでもないようですし、豚であることを利用して人間社会のいざこざから一歩引いているような台詞が何度も出てきます。

ジーナはどうしたらあなたにかけられた魔法が解けるのかしらね、なんて切なげにぼやいているのに、罪な豚だポルコ・ロッソ。

 

そんなポルコが作中で回想シーンを除いて二度、マルコに戻るシーンがありますね。

一度はカーチスとのリターンマッチを翌日に控えた孤島での夜、弾丸を選別しているシーン。二度目はリターンマッチ終了後、フィオとジーナを見送った後。

このシーンはどちらもマルコの「人間を愛しむ気持ち」が関わっているように思います。

将来有望、前途洋々な少女フィオをカーチスのような軽薄で恋多き男に渡すわけにはいかない、負けるわけにはいかないという気持ち。

愛することにまっすぐなフィオと触れ合って、ジーナの思いも知った上で揺れ動く気持ち。

 

マルコは戦争で死んでいった戦友たちの手前、またジーナが(意地悪な言い方をすると)最後まで自分を選ばなかったこと、自分も死んでいったジーナの元夫たちと同じ根っからの飛空挺乗りであることなど踏まえて、女を愛で大切にしながらも「恋」をすることは出来なかったのではないでしょうか。

豚であれば人間社会のいざこざは関係ない。だから人間どうしの色恋沙汰にも悩まなくて済む。

豚という立場を甘んじて受け入れているということは、マルコは社会に限らず細かなひとりひとりの人間どうしの関係からも逃げていたということです。

 

それが終盤にかけて、短時間に何度も人間の姿へ戻っています。

これにはポルコの次の台詞で全てが込められているのではないでしょうか。

「お前はいい子だ。フィオを見てるとな、人間も捨てたもんじゃねぇって、そう思えてくるんだよ」

フィオやカーチスら、自分と同じところには傷を負っていない若者と触れることで、ポルコの心は癒され恋に前向きになれたんですね。

 

作品終了後ポルコがマルコに戻ったのか、ポルコとジーナは結ばれたのか、明言されては居ません。

が、きっと戻れたのでしょう。そして結ばれたのでしょう。

あのラストがあってそれでもまだジーナを置いたままにし続けるのであれば、ハードボイルドな男性ではなくただのヘタレです。そんな男は映画にはならないはず。

 

女の子にほっぺちゅーされて頬を染めるマルコがアドリア海のマドンナに今後どうかわいがられるのか、ちょっと見てみたい気もしますがそれは彼らとフィオとの秘密ですかね笑